Do-Not-Trackの法制化でイノベーションサイクルに入るウェブ広告

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March 17, 2011 13:18 jst
author
junichi ikeda

先日FTCで提案されたDo-Not-Track ルールが、商務省、ホワイトハウスの検討を経て、連邦議会での立法過程に入ったようだ。

White House to Push Privacy Bill
【Wall Street Journal: March 15, 2011】

The Circuit: Online privacy hearing, Netflix looks at content creation, Google-ITA merger
【Washington Postl: March 16, 2011】

具体的なDo-Not-Track の実施事態は、ブラウザを通じたオプトアウトの導入となりそうだとのこと。

大事な点は、Do-Not-Track の実施によって、個人データへの到達に一定の線が引かれることだ。これで、ウェブ広告の個人追跡志向にも限界が設定され、ウェブ上における「広告」のあり方=開発方向も再検討されることになると思う。

簡単にいえば、広告接触や効果に追跡に一定の歯止めがかかることで、改めて、かつてのようなプル型の、イメージ型の広告に注目が集まるのではないかと思う。

その場合、ウェブの能力を考えれば、ユーザーを集めて自発的な情報開示に基づいて、より精度の高い広告の投入が検討される。その時に、人々が集まるサイトとして、昨今であれば、ソーシャル・ネットワークが注目を集めることになる。そのため、逆に、ソーシャル・ネットワークが広告主にユーザープロファイルを売っている、という嫌疑がかかることになる。

When the Marketing Reach of Social Media Backfires
【New York Timesl: March 15, 2011】

こういう状況を考えると、privacy billの導入による人為的なルールの登場は、このような議論に一定の歯止めをかけることになるのだろう。

とはいえ、ルールがあるところには必ず抜け道がある。そして、抜け道があるところで、新たな商品開発が行われるのは、既に、金融商品において見られることだ。そのような規制当局と事業者とのイタチごっこが、金融商品だけでなく、今後は、広告の手法開発でも起こるようになる、ということだろう。

イタチごっこが起こるのは、アメリカの場合、ルールがないところは(自主判断で)新たなルールをつくってもいい、という発想が普通だからだ。その分、常に新たな規制当局のルール導入による事業リスクを持つ。裁判となるlegal riskも抱えることになる。

とはいえ、そのようなゲームのルールの流動性が、商品開発というイノベーションを生み出すことも確かだ。そして、その意味で、ルールを臨機応変に導入しうる規制当局の機動力も、実はこのようなイノベーションゲームを生み出すための要件となる。

いずれにしても、今回のような動きを通じて、ウェブ上の広告のあり方が水路付けられ、ひいては、ウェブ上の「メディア」のあり方も変えていくことになる。

先日のHuffPoの動きとあわせて考えれば、今は、既存のメディアの慣性を持たない、その意味では真性のウェブメディアが登場するタイミングなのかもしれない。面白くなってきた。