インフラ誘致のための誘引材としてのデータセンター

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March 08, 2011 15:13 jst
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junichi ikeda

ワイオミング州が、その寒冷な気候を生かして、データセンターの誘致に努めているという。

Wyoming Plays It Cool
【Wall Street Journal: March 8, 2011】

ワイオミング州といってもピンと来ない人に対して簡単に説明すると、カリフォルニアの北にオレゴンがあるが、そのオレゴンから東に入った二つ目の州(一つ目はアイダホ)。記事のリードにもあるが、鉱山と牧畜が産業の中心で、イメージはカウボーイ。人口は50万人余り!で全米で最も少ない。そのため、下院議員も一人しかいない(つまり州全体で一選挙区)。

その州が、もちろん、産業誘致を考えてのことだが、データセンターの誘致に努めている。

というのも、データセンターで利用する電力のおおよそ3割は、データセンターの機材が発した熱を冷却するために使われる。その分を寒冷な自然環境が補ってくれるから、というのが理由の一つ。

コストダウンのもうひとつの要因は、電力が安いということ。これは、近隣のアイダホ、ユタに続いて全米でも電力が安い地域である利点を活かそうとするもの。

このような従来の環境に加えて、データセンター関連産業については州の税制で優遇をしようという計画もあるようだ。

記事では、とりあえず、EchoStarというアメリカの衛星放送会社のデータセンターが既にワイオミングで稼動しているとのこと。ここにVerizonを何とか誘致したいということのようだ。

この話は、いわゆる西部のイメージを作る上でも役立ちそうなので、ちょっと記してみた。

ちなみに、全く、文脈が異なる話になるが、現在、アリゾナの南部で、Baja Arizaona(バハ・アリゾナ。「バハ」はスペイン語で「下」とか「低い」という意味)という独立州をつくろうとする動きがある。今年に入って下院議員の銃撃事件があったTusconを含む地域で、アメリカ史で「ガズデン購入」といわれる、追加でメキシコからアメリカに編入されたという歴史を持つ。そのBaja Arizaonaが、州の資格を主張する際に強調しているのが、人口がデラウェアやニューハンプシャーよりも多い、ということだ。この理屈からすると、ワイオミングよりも多い、ということになる。

上でワイオミングは、下院議員は一人のみ、と書いた。簡単に言うと、いまある50州の枠組みが、アメリカの場合、いつまでも続くと言い切れない理由の一つが、この人口の大小、増減、というリアリティだ。とりわけ、南西部を含むサンベルトと呼ばれる地帯は20世紀の後半を通じて人口が増えた地域だ。

そして、そのトレンドから取り残されているのが、ワイオミングのような西部の内陸部にある諸州ということになる。そこでは、いまだに広大な土地、というか荒地も残っている。

だから、今回のデータセンター誘致の件も、当事者であるワイオミング州からすればそれなりに切実な話であるということだ。

もちろん、今回のような話がなければ、少なくともテクノロジーに関する記事として触れられるような場所ではない。それも含めて、アメリカにはこういう場所もあるのだ、ということで紹介してみた。