Googleの電子書籍サービスであるGoogle e-Booksがようやくスタートした。
e-bookstoreはここ。
プレゼンテーション映像はここにある。
Google Opens Doors to E-Bookstore
【New York Times: December 6, 2010】
Google Opens Online Bookstore
【Wall Street Journal: December 6, 2010】
プレゼン映像にある通り、基本的にはクラウド志向で、ブラウザを起点にしながらも、デバイスによらない利用が可能だ。
ただし、Kindleも既にそのようにデバイスフリーな利用が可能なので、この点にはそれほど目新しさを感じない。
多分、今後に期待したいのは、ブラウザベースであることが、やはりオープンなサーチを可能にするところではないかと思う。
たとえば、次の記事は、広告による閲覧モデルについて触れている。
The Ultimate Effect Of Google E-Books: A New Ad-Supported Model For Books
【Paid Content: December 6, 2010】
図書館なり知り合いからなり借りて読む、という習慣は既にあるわけで、その習慣を起点にしながら、少しずつ読みのスタイルを変えていこうとする方向だ。やってみなければわからないけれど、確かに可能性はある。
クラウドベースであり、デバイスフリーであることは、文字通り、ネットワーク内のデータベースのほうが「本の実体」であり、それらへのアクセスを状況に応じてデバイス=インターフェースを使い分けることで行われる。今は、既に、実物の本があり、その本の所有のアナロジーから、たとえばKindleのような専用端末が好まれる。これは、読み手としても売り手としても、想像しやすい入り方だ。
ただ、先述のように、Kindleにしても、実はAmazonが管理する本のデジタルデータへのアクセス権を買っているようなものだから(実際、「所有」のあり方が購入時に設定されていて、それが法的にどう解釈されているか、そして、どう解釈されるべきか、は今後、何らかの具体的事件が起こることで裁判を通じて明らかになっていくのかもしれない)、デフォルトとして、物理的本か、データか、という認識の仕方も変わっていくのだと思う。これは、あるタイミングで、逆に「物理的本らしさ」とはなんだったのか、ということを振り返って、形式化させるのだろう。
それはさておき、ブラウザがデフォルトの窓口というのは、当然、本の外の他のウェブ上のリソースとどう「リンク」をつけていくかが問われるわけで、そこでこそ、何らかの新規性が生まれるのだろう。つまりは、利用者の振る舞い方が集積され、「読み方」にゆらぎが産まれるということだ。
ということで、変化はユーザーの側から現れる。
バラバシがいうように、毎日が実験場になるウェブとして、このGoogle eBookも捉えるのが適切だ。
Googleのサービスはいつも当たり前すぎて驚きに欠けることが多く、今回のeBookもそう見える。だが、ベータ版的更新が普通のウェブサービスでは、マーケットインがベースとなり、驚きは欠けがちだ。だから、その普通な感じの中に何がポテンシャルとして埋めこまれているか想像することの方が大事だと思う。
その意味では、件のGoogleのプレゼン映像が、材質の見た目が紙で、クレーアニメのように作られているのは、なかなかに示唆的ではないか。もちろん、作り手にはそんなことを考えていたとは思えないのだけれど。