Google(YouTube)に対してViacomがコピーライト侵害で訴えていた訴訟だが、一審である連邦地方裁での判決はGoogleの勝訴となった。
Judge Sides With Google in Viacom Video Suit
【New York Times: June 23, 2010】
Google Wins Key Copyright Ruling
【Wall Street Journal: June 23, 2010】
Google(YouTube)はViacomがコピーライトを有する作品から利益を搾取している、という理由で三年前にGoogle(YouTube)に対してViacomは訴訟を起こしていた。これに対して連邦地裁の判断は、Google(YouTube)はDMCA(Digital Millennium Copyright Act:アメリカのデジタルコピーライト法)にある"safe harbor"に該当するため、コピーライト法違反には当たらない、という判断をした。
一審の判決なのでViacomは提訴する方向にある模様。
今回の判決に対してはインターネット企業は安堵しメディア企業は難渋する、というのがわかりやすい見方と思われるかもしれない。しかし、Viacomの提訴から三年の間に、インターネットの利用環境も変わっている。
わかりやすいところでいえば、iPadの登場によって有料コンテント配信が「公式」に始まりつつある。CGMの土台となるSNSについてはFacebookが数億人の登録ユーザ数をもつまでになった。マイクロペインメントに対する技術開発も鎬が削られている。
状況は常に動いている。技術もユーザー利用も三年経てば三年分変わる。三年立てばChris Andersonの“FREE”も出てくる。事態は推移する。
こうした現実の事実化によって、「インターネットはクリエイティブ産業の浮沈に関わる」というViacomに代表される見方も、では、その当のクリエイティブ産業とは誰を指すのか、どこまでを指すのか、という疑問を惹起しないではいられない。
こういう時、個人的にいつも思い出すのは、日本でプリクラが登場した頃の話として、某有名タレント事務所はお抱えのタレントの映像提供にナーバスになったけれど、その一方で、当時売り出し中の事務所のタレントは真っ先にプリクラに画像提供をしていたこと。その売り出し中のタレントは、その後、テレビドラマなどにも登場して人気を博していた。
つまり、人気=有名性の獲得や制御こそが、クリエイティブ産業のビジネスの本質で、その根底にあるのは、結局のところ、ユーザー=ファンへの浸透と支持の調達、ということになる。ありていにいえば、お客さんが大事、ということ。
もっとも、ラディカルな立場として、有名性ではなく匿名性、つまり匿名的集合制作物がコンテント制作のフロンティアだ、というものもある。実際、MADに代表されるサンプリングやそれへのコメントを含めた創作行為が事実性を帯びているのも確か。
そう考えると、現実的には、有名性、匿名性、の二つの道が明らかになってきている、という捉え方をざっくりとしておけばいい。そして、いずれにしても、利用者の支持や支援、が最初の要素になる、ということだろう。
さて、仮にViacomが上訴した場合、二審までの間にそれ相応の時間が過ぎることだろう。その近未来の事実性は、Viacomにプラスに働くのか、マイナスに働くのか。そうした視点でこの裁判の続きを気にかけたい。