連邦議会図書館がTwitterの呟き(tweets)をデジタルアーカイブの対象とすることを決めた。これにより、著名人をはじめとするTwitter上の呟きは連邦議会図書館に所蔵され、歴史的文書の一部となる。
Library of Congress Will Save Tweets
【New York Times: April 14, 2010】
Library of Congressによる発表もある。
How Tweet It Is!: Library Acquires Entire Twitter Archive
【April 14, 2010】
連邦議会図書館(Library of Congress)は210年の歴史をもつ図書館で、名前の通り、連邦議会の業務に資するよう書籍をはじめとする資料を収集している。コピーライト法による献本でアメリカの知の集大成となる場として機能している。
所蔵対象物は210年の歴史の中で、法律に関わる文書・書籍から一般書籍へと対象を拡大し、メディア技術の刷新に伴い、映画や写真、音楽なども所蔵対象としてきた。
今回のTwitterの件は、インターネットの普及を受けて連邦議会図書館が進めていた“Web Capture”という、ウェブ上の表現物を収拾するプロジェクトの一環としてスタートするようだ。ウェブのニュースやブログなどが既に対象となっていた。
所蔵される予定のTwitter上の呟きは、Twitterが創業された2006年3月まで遡って全呟きを収蔵するという。基本的にはプライバシー保護に配慮し、公けにされた呟きが対象となる。
つまり、これはいわゆるfolklore的な発想からのアーカイブ化、その時代の普通の人々の様子を後年に生き生きと伝えるためのプロジェクトにあたる。そのために広く一般の人の呟きも所蔵されることになるというわけだ。
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しかし、この連邦議会図書館の決定はとても興味深い。
一つ一つの呟きがTwitter上に流れる傍から歴史が刻まれることになる。呟いた傍から未来の人々の参照に資する「テキスト」になっていく。
Twitterはタイムライン上に流れていく呟きの流れ、フローが不思議な「今」感を出しているわけだが、流れていくことで、それらの呟きは自動的に消失していくと想定されている。あたかも声による対面の会話が発話した瞬間に消えていくように。
しかし、当たり前のことながら、ウェブ上でデジタルに記されたものは基本的には蓄積可能だ。TwitterのユーザーならTwilogのような、自分が呟いたtweetsを後で見返すサービスを利用している人もいるだろう。呟いた傍から「log=ログ」としてアーカイブ化されることは既に実践されている。
ただ、Twilogのようなアーカイブはあくまでも個人の利用、そして一部フォロワーの利用に供されるようなもので、極めてローカルな仲間内、あえていえば「小さな共同性・公共性」の中で参照されていたにすぎない。Twitterの呟きは、福嶋亮大『神話が考える』の中で言われていたephemeral(エフェメラル=つかの間に消えてしまう)なものなのだ。
それが今回の連邦議会図書館の動きによって、アメリカ政府=国家という存在が、直接それらTwitterのlogを半永久的に「保存」することを選択したことになる。いわば固定されたテキストとして残されることになる。もはや制度的に「エフェメラル」でいられない。
こういう状況を踏まえると、Twitterについては、メディア論的視点できっちり考える必要があるように感じている。