アメリカ中間選挙に向けた動きが本格化: David Plouffe、デモクラットの選挙戦略参謀に。

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January 25, 2010 20:04 jst
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junichi ikeda

先日のマサチューセッツの上院補選でのまさかの敗退を受けて、デモクラットが11月の中間選挙に向けて動き始めた。

2009 Democratic agenda severely weakened by Republicans' united opposition
【Washington Post: January 24, 2010】

Obama Moves to Centralize Control Over Party Strategy
【New York Times: January 23, 2010】

具体的には、大統領選キャンペーン中のObama陣営の中心人物の一人であったDavid Plouffeが、11月の中間選挙対策の陣頭指揮を執ることになった。

Former Obama campaign manager to be White House adviser
【Washington Post: January 24, 2010】

以下は、PlouffがWashington PostにOp-Edとして寄稿したデモクラットの処方箋。

November doesn't need to be a nightmare for Democrats
【Washington Post: January 24, 2010】

早期にヘルスケア改革法案を通過させ有権者を安心させる、など、選挙対策の視点からの助言が挙げられている。

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大統領制をしくアメリカでは、議院内閣制の日本と違って、大統領と連邦議会議員は別々の選挙で直接選ばれる。そのため、大統領と連邦議会の多数派が、異なる政党になる「ねじれ」は生じうる。

そして、大統領一期目の最初の中間選挙では、しばしばこうした「ねじれ」をもたらすような選挙結果が起こってきた。

「ねじれ」の状態では、ホワイトハウスは常に連邦議会との妥協を強いられることになる。その結果、思い切った政策は打ち出ににくくなる。政策は、法案として通過しないと実行するのは難しいから。もちろん、既存の法体系の範囲で、大統領令によって進めることもできるが、思い切ったことをするには限界が生じる。

また、Obama大統領の場合は、2012年の二期目を目指す大統領選も控えているわけで、そのためにも11月の中間選挙は、現状通り、デモクラットが多数派を占める連邦議会をなんとしても維持し、政策実現に弾みをつけておきたいところ。

David Plouffeの抜擢も、こうした先々のことを考えてのことでもある。

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ところで、これは、以前のエントリーでも触れたことだが、アメリカの場合、選挙日程は予め決められている。このことは、有権者の選挙への関わり方のベースラインを決めている。そして、日程が決まっているからこそ、選挙キャンペーンは計画的に、「戦略」として、実行される。

その結果、アメリカでは、選挙キャンペーンは、新商品のキャンペーン同様、産業化している。

その選挙キャンペーン産業を支えるのが政治献金なのだが、その政治献金については、従来は「金額」に制限をつけてきた。

ところが、先日、アメリカの最高裁は、政治献金について「上限を設けるのは、アメリカ憲法で保障された『表現の自由』を損ねるものだ」という判決を出した。

Justices, 5-4, Reject Corporate Spending Limit
【New York Times: January 21, 2010】

今回、Obamaが11月に向けた対策を急いでいるのには、この最高裁の判決も影響を与えている。政治献金の上限が撤廃されれば、相対的に資金に余裕のある大企業を中心に献金額が増える。そして、そうした大企業の政治的影響が増える。

伝統的には、デモクラットよりもGOPの方が企業との関係が深いため、今回の判決は、選挙資金面でGOP優位に働く可能性が高い。この点が、Obamaをはじめとするデモクラットの有力者(Nancy Peloci下院議長やHarry Reid上院議員など)が選挙戦略の策定に焦り始めている理由の一つ。

有権者の支持を取り付けるために、Obamaの大統領府の政策のトーンも「中道」を意識した方向にシフトせざるを得ない。

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中間選挙は、大統領選ほど華々しいものではない。また、全米で分散して行われるので、大統領選ほど一様なイメージで報道されることもない。とはいえ、下院議員は全員、上院議員は三分の一、そして、各州の知事(Governor)についても選挙が行われる。つまり、一大行事であることは間違いない。

ということで、今後は、折に触れて、中間選挙に向けた取り組みについても気にかけていこうと思う。

今回のScott Brownの勝利のように、もはやウェブを活用した「有権者の動員」は当たり前になっている。そして、アメリカの場合、選挙の現場は、新しいコミュニケーションツールの利用方法が考案される場の一つでもある。この点にも注目してきたい。