Neo-conservatismの創立に大きく影響を与えたIrving Kristolが亡くなった。享年89歳。
Irving Kristol, Godfather of Modern Conservatism, Dies at 89
【New York Times: September 18, 2009】
Irving Kristol, Architect of Neoconservatism, Dies at 89
【Washington Post: September 18, 2009】
昨年亡くなったWilliam F. Buckleyに続いて、アメリカのConservatismという政治思想を練り上げ、一般に広めることに尽力してきた第一世代の人物が他界したことになる。
今年になって、アメリカでは、オバマ政権の誕生がもつアメリカ政治史における意義を検討する論考や出版物が相次いでいる。
その中で、最も目立つものが、Reaganの時代の終わり、GOP優位の時代の終わり、Conservatism優位の時代の終わり、などのような、過去四半世紀のアメリカ政治を総括するもの。たとえば、先日も、Sam Tanenhausが“The Death of Conservatism”という書籍を出版したばかり。
アメリカのConservatismは、1930年代にFDRが実際の政策に結実させたProgressivism(進歩主義)や、アメリカでいう“Liberalism”に対する疑念から生じた。そうした出発点のConservatismにあった発想は、Progressivismが前提にしていた「進歩の思想」、それを支える「人間理性の全面的信頼」に対する疑問だった。
もちろん、そうしたピュアな発想だけでは、実際の政治活動、政策提案、そして選挙政治、に生かすことはできない。具体的な政策課題とつきあわせることで政策思想としての細部を詰め、現実課題をフィードバックさせながら政治思想としての広さや深さを練り上げ、その流布を通じて、選挙民への働きかけの方法や組織を開発していった。
そうした動きが、ニクソンの「南部戦略」であり、レーガノミクスであり、宗教右派やネオコンの台頭であり、Heritage FoundationやNational Reviewのようなシンクタンクやメディアの定着であった。
だから、Conservatismが一つの思想としてスタートしてから、レーガンの大統領選出という形で政治的結実を得るまでに四半世紀、そのレーガンの時代が終わるまでにまた四半世紀、都合、半世紀ぐらいかけて誕生から(今指摘されつつあるとおり)終了にまで至ったことになる。
Irving Kristolの死は、William F. Buckleyの死と同様、American Conservatismの盛衰に具体的イメージを与えるものとして記憶されていくことになるのだと思う。
もちろん、オバマ誕生による「オバマ以後」の位置づけは、そうしたConservatismの総括・反省の中で、少しずつ具体的に語られていくことになると思う。
ということで、2008年、2009年は、節目の年としてアメリカ史に登録されていくことになるのだろう。