オリジナル脚本から離脱するハリウッド

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September 08, 2009 17:03 jst
author
junichi ikeda

アメリカで今秋公開の映画は、小説やコミックなどが原作で、オリジナル脚本でないものばかり。

ブロックバスターの可能性を少しでも高めるため、オリジナルの脚本開発よりも、原作付き映画の製作に奔走するハリウッドの状況を伝える記事。

Hollywood Hits the Books
【Wall Street Journal: September 4, 2009】

「原作付き」と言うとき、その対象は、小説、コミック(マンガ)、童話、などが主要な対象。原作へのアクセスを確実にするため、より直接的な獲得にハリウッドは乗り出しており、たとえば、先日もDisneyがコミックを手がけるMarvel社を買収契約が成立したばかり。

Disney Nabs Marvel Heroes
【Wall Street Journal: September 1, 2009】

Marvelは、Spider ManやX-men、Fantastic Four、など既に映画化されたことのある、人気の高いアメコミの版元。Marvelを獲得したのは、マーチャンダイジング全般も押さえようということ。

原作を買いあさるのも、配給の成功率の高い作品を予め揃えておきたいから。もっとも、最初のWSJの記事によれば、俳優や女優で動員成績を見込むことが難しくなってきたため、ということだが。

確かにそれも理由なきことではなくて、動員が見込めるような大御所の俳優・女優については、彼らの出演料がかさんでしまうことがネガティブ要因だし、最近では、George Clooneyのように俳優自らがプロデューサーになり、映画制作のパッケージをつくりあげた上で配給を請け負うスタジオに売り込むことも普通になっていたため、そもそもハリウッド・メジャーは自ら直接製作に手をかける部分が減ってきていた。

(事情が異なるのはテレビ番組制作の部分。ハリウッド・メジャーはいずれもテレビ番組制作会社を抱えるが、そこでは映画とは異なり、最初期のハリウッドの映画制作であった、工場システムが今でも稼働している)。

経済の低迷は、2008年まで流れ込んできていたWall Street moneyをも干上がらせてしまった。そのため、制作費の獲得も厳しくなっている。必然的に制作本数も減ってしまう。そういう状態では、原作という「保険」のある脚本の方が安心できることになる。

このあたりは、三大ネットワークがHuluのように、配信装置事業に進出しているのと好対照。リアリティTVが圧倒的に増えてきているとはいえ、今でもScripted-dramaの工場はハリウッドなので、その役割分担から、アメリカの放送産業は実質的にインフラ産業なのだと改めて気付かされる。だから、新たな「テレビネットワーク」としてHuluのような配信サービスに進出するわけで。いわばテレビ視聴小屋の出店戦略のようなもの。

その裏として、ハリウッドの位置づけは、自らはあまり制作せず、広い意味での配給ライセンスだけを保有し、それを映画館、テレビ、DVD、ウェブ、へと流していく役割に徹する。レコード・メジャーの原盤権(マスター)のように、できあがった映画の利用権(配給権や放送権など)をハリウッド・メジャーが押さえていくことになる。