ニュース週刊誌の世界で、イギリスのThe Economistが部数の伸びや営業収益(販売、広告の双方)で一人勝ちしていて、劣勢に立たせているアメリカのTIMEやNewsweekがThe Economistの模倣に走っている、でも、それは多分、うまくいかない、という論考。
The Newsweekly’s Last Stand
【The Atlantic Monthly: July/August 2009】
実際、Newsweekは大変なようだ。
Newsweek Cuts Summer Issue
【Wall Street Journal: June 17, 2009】
一番根本的な指摘としては、そもそもニュース週刊誌が約100年前にできたカテゴリーで、それは当時、日刊の新聞(newspaper)との差別化から生じていた。また、読者も、社会の動きの簡潔な要約を求めるような、中産階級層を想定したし、実際、ニュース週刊誌がそのような中間階級層を再生産してきた。
けれども、情報技術の進展と社会への浸透によって、情報が溢れてしまったため(これ、正確には、以前のように同じ情報を複数の主体によって細切れに切り分けて管理することができなくなった、ということだと思うけど)、読者の初発の意向が「要約」に向かってしまって、新聞の方が、要約版の主要提供者になってしまったため。
その結果、Weeklyではサイクルが合わなくなってしまい、想定読者層そのものが消えてしまった、とするもの。
実際、ニュース週刊誌としてTIME、Newsweekに続いていた、US News & Worldは、昨年末から月刊誌に移行している。読者がいなくったことの直接的な反映といえる。
一方、The Economistはもともと金融・投資情報誌としてあり、基本的な立ち位置は極めて現実的な中道、つまり、「市場主義の中道保守」の基盤の上に若干の「左派中道の者改革主義」をまぶしたもので、現実的には党派性を免れる位置づけだった。
(留学時の同級生で、フランス人の学生がいたけど、彼もThe Economistが愛読誌だった。彼曰く、フランスの雑誌は党派性が強くて、現実的な解決策に全然役立たないということだった。もっとも彼はフランス人であるにもかかわらず大学はイギリスのLSEで学んでいたけれど)。
Vanity Fairも似たようなコメントを少し前にしている。
Why Time and Newsweek Will Never Be The Economist
【Vanity Fair: April 20, 2009】
Vanity Fairの記事では、The Economistのまねをしてもうまくいかないのは、Time やNewsweekが誤解をしているからで、その誤解とは:
●The Economistはコメンタリーや分析記事が中心で一次取材をおろそかにしていると思われがちだが、実際にはアフリカやアジアなど世界中に特派員を派遣して独自の取材ルートともっている。つまり、きちんと「取材」していること。
●金融誌として、WSJ(やFT)に続く必読誌となっているが、この分野はそれほど他誌が入る市場の余地がないこと。
●アメリカ人は、実際のところ、国際ニュースにほとんど関心を持たないこと。
●イギリス趣味、オックスブリッジ趣味など、知的スノッブを騙る要素も捨て置けないこと。
様々な意味で、いわば大英帝国の威光という遺産の上に成立している、というところだろうか。こういう時の禁じ手としての形容になるが、ブランドがある、といってしまえばとりあえずは普通の人は納得できてしまうようなこと。そして、所詮、雑誌は、そうした普通の人(実際にはその内容を咀嚼したりしない人々)に支えされている、というところだろうか。
Atlanticの記事は、最後に、general-interestではなくnicheがこれからは勝利する、と締めくくっている。