“Piracy vs Freedom” in Paris

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June 11, 2009 14:58 jst
author
junichi ikeda

フランスでOnline Piracyの取締に関する法律が、裁判所に「違憲」と判断された。

Sarkozy's Web-Piracy Fight Dealt Blow
【Wall Street Journal: June 11, 2009】

French Court Defangs Plan to Crack Down on Internet Piracy
【New York Times: June 10, 2009】

このOnline Piracy 取締法は、サルコジ政権が強く推進していたものだが、“Freedom of Speech”を侵害するものとして違憲とされた。

法律のポイントは、著作権侵害物をダウンロードし続ける人物を発見した場合(発見するのは著作権所有者によるモニター団体)、政府当局(この法律によって新たに設置される政府機関)にその旨を通知することで、当局は問題の人物のインターネットアクセスを強制的に遮断することができるというもの。この「強制遮断」の部分が、「表現の自由のために必要なコミュニケーションツールへのアクセス権を侵害する」と判断されたようだ。

要するに、当局への強制執行権の付与を見送る判断。これにより、当局は侵害者に侵害の通知を与えるにとどまり、それ以上は、裁判所での係争ということになる。

この法律は、フランスのコンテント業界大手であるVivendiらが中心に政府に働きかけられた法律で、フランスにとどまらず、広くコンテント業界から注目を集めていた立法だったという。世界で初めて、新設置機関を通じて実質的にコンテント保有者に強力な権限を与えるものとなるはずだったからだ。

これに対して、表現の自由の保持を訴えるadvocacy groupが対抗して、今回の判断に到ったということ。


なお、フランスの場合は、違憲審査は、裁判所=司法部が行うのではなく“Conseil Constitutionnel(=Constitutional Council=「憲法院」)”が行う。この「憲法院」は、議会を通過した法律が憲法に抵触しないかどうかを、当該法律施行前に審査する。

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簡単に本件のアメリカへの含意について。

いうまでもないことだが、インターネットは世界中で利用が可能であるため、各国の法律の調整が重要になってくる。国際ルールになる一つの方法としては、政府間で共通ルールを設定し、それを「条約」として各国で批准すること。

そして、アメリカの場合は、批准された条約を議会で国内法へと調整する。だから、条約批准は、アメリカにおいては、連邦議会を通じて立法化措置を執らせるための、一つの重要なルートになる。

だから、この場合であれば、「フランスでの立法化」から「EUでの立法化」もしくは「国際機関でのルール化=条約化」を経ることで、条約批准というプロセスとして、当該内容(今回の例であれば、online piracyの取締)が議会のアジェンダになることになる。

そのため、世界中のコンテント会社(といっても、要するにアメリカの大手メディア企業がその大半だと思うが)がフランスの動きに注目することになる。

裏返すと、アメリカの国外でもロビーイングする機会は多数あることになる。

こういうことを知るにも、上の報道は、興味深い。