Center-Right Parties Gain in Europe
【International Herald Tribune: June 8, 2009】
欧州議会選挙では、center-rightが優勢となる結果となった。
といっても、ドイツ、フランス、の主要国は、それぞれの国の政権党が欧州議会選でも勝利を収めている。Center-right優勢を決めたのは、イギリスの労働党(Labour)が大敗を喫ししたため。
欧州議会選挙といっても、EU加盟国それぞれの政情に左右されるのが実態で、「EU全体の利益」はなかなか争点にはならない。投票率は42%で過去最低、加えて、足下の景気後退もあって、生活「保守」につながるcenter-rightが優勢を占めた。
なお、欧州議会(European Parliament)は、EUの立法部に当たる。EU directive(EU指令=EUの法律に相当)を定めるのが役割。
center-rightといっても、たとえば、フランスでアングロ・アメリカン流の政策導入に積極的なSarkozyの政党であるUMPが勝利しているのを見ればわかるように、アメリカでいえば、center、あるいは、center-leftとも重なる立場となる。
今アメリカで検討中のhealth-careを、欧州では既に主要国が提供していることを考えれば、アメリカのデモクラットが、部分的に欧州型を目指しているともいえる。そのため、アメリカではオバマやデモクラットの政策が欧州的で“Socialism”的だと、GOPからしばしば非難されたりする。しかし、むしろ、欧州のcenter-rightとアメリカのcenter(-left)が重なる部分も多く、それがゆえに、今後、引き続き、Trans-Atlanticの協調関係は維持される、ととっておいていいのだろう。
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普段アメリカのことに主に取り上げているこのサイトで、欧州のことを取り上げたのは、 “Trans-Atlantic”という繋がりが、主に産業に関わる国際ルール作りで実質的に大きな影響を与えているから。たとえば、競争政策とか独禁法とか呼ばれる分野では、EUとアメリカが、ルール作りの点でも、実行の点でも重要な役割を果たしているから。そして、欧州議会は、そうした法律をつくる機関であるから。
今回のドイツ、フランスの選挙結果を見る分には、今後、EUとアメリカの間では、大きな齟齬が生じるとは思いにくい。
むしろ、気になるのは、イギリスの動向。今後、国内政治においても、政権党が労働党から保守党に変わる可能性が代であること。あるいは、EUとイギリスとの関わり方、つまり、EUには加盟しているが、ユーロ圏ではない、という特殊なポジションをどうするのか、という問題もある。
しばしば、アングロ-アメリカンといわれるように、イギリスとアメリカの関係は深く、そのため、イギリスは、EUとアメリカとの仲立ちになるようにポジションにある。さらに、カナダ、オーストラリアなどの英連邦の中心でもあり、イギリスは、国際的な政治経済の配置の中では、ヘソのような位置にあるといえる。その分、国際的なルールメイキングの舞台では老獪な振る舞いをする国でもある。
しばらくは、イギリスのことにも注目していきたいと思う。