昨日のエントリーの最後で触れたが、David GeffenがNew York Timesの株式取得に乗り出している、という。
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【Newsweek: May 13, 2009】
David Geffenは、スピルバーグとともにDreamWorksを創立した人物(創立者は三人で、もう一人はJeffrey Katzenberg)で、音楽業界で成功を納めた。デモクラット支持者で、ハリウッドのファンド・レイジングの中核的人物でもある。
そのGeffenがNew York Timesに関心を示しているのは、NYTを現在の営利企業(For-profit company)から非営利企業(Non-profit company)へと変えることで、ジャーナリズムの活動を(それもデモクラット言説の中核的発信紙であるNYTを)、経済環境や株主への配慮などをせずとも、永続できるようにしたい、という考えがあるからだという。
彼が参考にしているのは、フロリダのSt. Petersburg Timesで、この新聞を発行しているTimes Publishing Company は、non-profitのjournalism schoolであるthe Poynter Instituteが所有している。このInstituteは、生前St. Petersburg Times の経営を行っていたNelson Poynter氏にちなんで設立された。
もともとSt. Petersburg TimesはNelson氏の父が買収し経営していた。Nelson氏自身は新聞記者のキャリアを経て、父から株式を購入し、経営に乗り出した。Nelson氏の死後、彼の株式がnon-profitのPoynter Instituteに移転された。
なお、Poynter Instituteは、Congressional Quarterly(CQ)という政治情報雑誌も所有している。CQは、連邦議会の様子を法案審議過程の報告まで伝える政治情報誌で、私も留学中はよくお世話になった。議会関係者、Poli-Sciのアカデミシャン、Advocacy Groupsのアクティビストらには必須の情報源でもある。
足下の新聞不況(といってもいいでしょう)に、全米各地の新聞が経営上苦しい状況にあり、もはや大都市圏の新聞でも例外ではなくなっている。たとえば、San Francisco Chronicleが新聞発行を停止に追い込まれそうであったりする(いうまでもなく、SFは全米でも有数の大都市)。
Geffenはこうした中、Nelson Poynter氏のようにNYTを、経営的に安定し、ジャーナリストがきちんとジャーナリズム活動に集中できるようにしたいと考えているようだ。もちろん、買い取られる側の状況もあるから、Geffenの思惑通りにことが進むとは思われない。けれども、ここでこのことを取り上げたのは、アメリカの場合、個人が(それだけの資産が個人にあるということが大前提だけれど)のりだして、煮詰まった状況を打破しようとするところがある、ということを示したかったから。