WSJだけでなくNYTやWPでも、Julius GenachowskiがFCC委員長に抜擢される、との報道。
Obama's Pick for FCC Signals Change
【January 14, 2009: Wall Street Journal】
Julius Genachowski to Be Nominee for F.C.C. Chairman
【January 14, 2009: New York Times】
Change Sweeping to the FCC
【January 14, 2009: Washington Post】
いずれの記事も、GenachowskiのIT系メディアやベンチャーキャピタルなどの経歴から、彼のFCCでは、従来の「電話、ケーブル、放送局」中心の政策から「インターネット」中心の政策へと大きくシフトするだろう、という。これは、主にブロードバンドの全米普及、net neutality、周波数オークション、等の点で指摘されている。また、GOPがFCC委員の多数派になって以来厳しくなった「放送内容の過激さ」への監視(懲罰金を課すなど)はゆるめられ、より「表現の自由」が得られるような方向に進むだろう、という見通し。
要するに、電話会社や放送局の独占性をよりゆるめて競争と多様性を確保する方向に向かう、ということだ。
インターネットを重視する、というのは、もはやインターネットが事実としてこれだけ普及しているのだから(オバマの大統領選勝利もインターネットなしでは困難だった)、その事実に即した政策を実施していこう、ということになる。インターネットをベースにして、事業規制、電波利用規制、内容規制、を改変していく、ということになる。
Genachowskiが所属していたIACの所有者であるバリー・ディラーは、コミュニケーションテクノロジーの変遷に応じて、テレビ、ケーブル、インターネット、とビジネス領域を渡り歩いてきた人物だ。あえていえば、既得権益化したメディアビジネスに立ち向かってきた人物といえる。その人物の下でビジネス開発担当のエグゼクティブとしていたわけだから、Genachowskiは、pro-Internet、pro-innovation、の立場と言っていいだろう。そして、その後、Genachowskiは自らVPを立ち上げて、個別のビジネスの立ち上げだけでなく、インターネット環境に即したビジネス生態系の拡大に関わるようになった。
アメリカのコミュニケーションズ・ポリシー(これをよく日本では通信政策と訳す人がいるけど、アメリカの場合、その対象として上述のようにテレビやネットも含むので、ここではカタカナ表記でそのままにしておく)にとっての意味合いは、政策立案の主導権が、東海岸から西海岸、なかんずく、シリコンバレーに名実ともに移るようになることだろう。そして、これは同時に、シリコンバレーも、他の産業同様、一つの特定利益集団(Special Interest Group)として、アメリカ政治の中で一定のポジションを持つようになった、ということだ。
西海岸の発想、カリフォルニアの発想、ベイエリアの発想、シリコンバレーの発想、・・・、これらがどのように実際の政策にインプリメントされていくかは、しばらく気をつけていきたい。