上で、アメリカのビッグスリーが政府からの資金援助をしてもらうために奔走していると書いていたら、ホンダがF1からの撤退を発表した。
ホンダの福井社長によると、その理由は、「単に経済が冷え込んでいるだけでなく、100年間繁栄してきた自動車産業は次の100年に向かう大きな変化を迎えている」から、ということだ。
ホンダは、日本の景気が悪かった90年代末でも業績は悪くなく、その頃で売上の3割は北米市場からだったと思う。前にも書いたはずだが、日本の製造業の屋台骨である自動車産業は、日本国内の需要だけでは業績を維持することができなくなっていた。
80年代の、冷戦崩壊前の、バブル崩壊前の、Japan as No.1と言われていた頃、日本の輸出産業として注目を集めていたのは、自動車と家電だった。家電産業が、その後のデジタル化やパソコン、インターネットの流れに乗り損ねて、国内でガラパゴス化し国際市場での存在感を徐々に失っていったのと比べ、自動車業界は、北米市場でもしっかりと地位を築き、トヨタに到っては、売上で世界一を誇るか、という段階にまで達していた。
上のホンダ社長の発言をそのまま受け取るなら、世界一を謳歌しようと思った瞬間に、そもそも、この産業自体が臨界点に達してしまった、ということのようだ。
このあたりは、「新たな100年」をどのようにして迎えるのか、その端緒についてばかりでは読みにくいのだが、さしあたっては、利用する燃料・エネルギーの変化、その供給インフラの変化、自動車を利用する場面の変化、自動車を支える技術そのものの変化、・・・、等々、様々なのだろう。
もっとも、アメリカで今、大騒ぎしているのは、トヨタやホンダが、ビッグスリーとは異なる雇用形態や製造ラインをアメリカにもたらしたにもかかわらず、その変化にビッグスリーが対応しそこねた(半分は経営の責任、半分は独特の労組の責任)ことに原因があるはずなので、個人的には、ホンダが「新たな100年を・・・」と言っているのは、実は、アメリカとは大きく認識がずれていると思う。
あえていえば、ビッグスリーは、トヨタやホンダ、あるいは、インドのタタ、をベンチマークしてリストラクチャリングすれば何とかなる、と思っていると思う。それに対して、(フロントランナーとしての)ホンダの認識は、自動車業界が行き詰まっている、ということのようだ。確かに、日本、とりわけ、首都圏では、国産自動車の売れ行きはずいぶん前から悪くなっている。そうしたトレンドも加味した上での、発言のようにもとれる。だから、このあたりは、では、ホンダが次に何をしたいのか、(まさか、ロボット?)、もう少し様子を見てみたい。
いずれにせよ、自動車業界は大変だ。
で、その「余波」の方だが、ちょっと長くなったので、続きとして、次回のエントリーに回す。