Media Ownership Ruleの見直し、再開?

latest update
April 05, 2006 12:50 jst
author
junichi ikeda

FCC Chief Seeks to Loosen Rules on Media Ownership
【April 5, 2006: Wall Street Journal】

FCC委員長Kevin Martin氏が、メディアオーナーシップルールの緩和作業再開を示唆。

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秀逸なのは、新聞関係者の会合で明らかにされた、Martin委員長の理由。

"Your job is to educate the public about the changes in the media landscape."
(あなたたちの役割は、人々に、いかにメディア環境が変わったかを、啓蒙することだ。)

新聞社が中心になって、テレビ局やケーブルとの所有の有り様を変えていく、というものだろう。

幾つか補助線を引くと:

●新聞社は通常リベラル色が強いが、その人々に共和党選出のMartinがすりよったこと。
●アメリカの新聞は、おそらくはネットの影響からか、実売がどんどん落ちてきていて、業界内での効率化のためのM&Aが進行していること。
●前のオーナーシップルールの緩和は、日本で言えば郵政民営化政局、あるいは、道路公団民営化政局のような、混沌としたものになり、右から左までの市民団体から猛反発を食らって混沌としたこと。
●結局、スーパーボウルのジャネットジャクソンおっぱいぽろり事件で、オーナーシップルール緩和から、むしろ表現内容規制の強化、罰則規定の執行、という反動した方向に舵が切られたこと。
●その結果、民放(とりわけケーブル)は、モラルもへったくれもない、メディアと認知されてしまったこと。
●さらに、日本同様、アメリカも地上波デジタルへの移行を進めなければならない(2009年2月がデッドライン)。

こんな状況だから、たぶん緩和させるなら、そこは(テレビよりはまだジャーナリズムのモラルがあると思われる)新聞が主体になってほしい、ということなのだろう。

新聞やテレビのローカルメディアは、選挙キャンペーンという観点から、アメリカでは政治と切っても切れない関係にある。けれども、そのローカルメディアがへたっていきそうな状況にある。新聞の売り上げはどんどん減っている。ケーブルの普及の中で、地上波テレビの役割はどんどん薄くなってきている。その一方で、インターネットの普及は目を見張る。とりわけ、一昨年、光ファイバにはアンバンドリング規制を適用しないという方針をFCCが示して以来、ベル系電話会社による疑似ケーブルサービス(日本だと最近IPTVといわれているようなもの)が登場してきている。同時に、後れていると言われるブロードバンドの普及にも弾みがついてきているし、これまた後れていると言われていた携帯電話も勢いがある。(だから、AT&TがBellSouthを買収、なんてことも起こるのだけど)。さらには、ネットでのVODインフラも整備されてきた。

という事態で、既存メディアの役割が相対的に小さくなってきている。
だから、その変化の胎動を、自分たちが合併することで身を以て示してほしい、というのが、Martinの言葉の意味なのでしょう。

ちょうど日本でもマスメディア集中排除原則を緩和して放送局の持ち株会社を導入しようという話がある。で、日本では、そもそも、新聞とテレビが強い資本関係にある。こうした米国の動きは、日本の動きを後押しする要素にこそなれ、邪魔するようにはならないだろう。

いずれにしても、このMartinという人物。共和党といっても、前任のPowellが単純な市場競争主義であったのに比べると、随分とニュアンスが異なる。むしろ、ネオコン的な、市場設計主義による公益の実現、というのに、随分とコミットしているように感じる。市場の競争が公正に行われることを管理することが自分たちの役割だというような感じ。実際、Martinは、FCC委員時代、時に民主党委員とも徒党を組むという方向にも動く人間だった。

ちょっとその背景が気になるところだ。