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【April 5, 2006: Wall Street Journal】
子供の宿題のサポートになるサイトを紹介したコラム。
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子供の宿題に手を焼く大人向けのサイトを幾つか紹介している。
DiscoveryがCosmeoというサイトを設置していたりしているのを紹介している。Discoveryは自然探検や歴史物が多いけど、そうした番組の素材になった、映像や写真、テキストが紹介されているとのこと。
アメリカは、高等教育に行く前の教育内容にかなりばらつきがあるから、日本の塾や予備校みたいに教授内容を絞り込んでそれを産業化する機会がなかなかない。いわゆる予備校は、大学生が大学院を目指すときに受ける統一試験(GREやGMAT、LSAT、など)用に、Princeton ReviewとかKaplanのようなところはあるけれど、全国的に展開している初等教育・中等教育向けの塾というのはあまり聞かなかった(もっとも、NYには、一応塾や家庭教師派遣会社のようなものはあったことはあったけど、それらが全国展開しているかどうかはよくわからない。)
そういうのもあって、これは憶測だけど、宿題は、親が子供と一緒にやるものって感じなのだろう。で、そこで困った大人用に、サポートを行う、ということ。
自分自身が留学したときを振り返ると、アメリカ人の学生は、自己流で宿題をやることが多い。で、たいていの場合、ゼロベースで考える。あるいは、自分の経験をベースに考える。裏返すと、あまり人の話を参考にしない。大体、日本的な意味で参考書のようなものはない。あるのは、標準的な教科書(辞書のように厚い)と専門書。勢い、自己流というか「オレ流」が本道になる。で、そうした自己流の知識で議論することになる。だから、グループ作業は本当に疲れた。
余談だが、書いてくる内容もみなバラバラだから(アメリカ人が論理的な文章を書く、なんていうのは、あれはウソ。標準的なプロトコルすら理解していない学生がほとんど。ただし、ロースクールの学生は除く)、それを一つにまとめるのは、とてもエネルギーがかかる。アーギュメント=議論の形式はクリアされた場合でも、その議論の論拠が本当にいいのか、という部分で、個人差が思いっきり出てくる。よくあんなので、月にロケットをとばせたな、とかまじめに疑問に思ったこともあったほど(苦笑)。
こんな感じだから、たぶん、初等教育、中等教育の頃の、学習の仕方って相当幅のあることやっていると思う。で、オレ流の親がオレ流の子供を育てていく、で、そのためのサポートをDiscoveryが提供する・・・のだろう。紙媒体でも、National GeographicやScientific Americanのようなちょっと科学っぽい雑誌が、書店でもちゃんと売られているから、それの延長線上にあるんだろうな。(大体、アメリカ人って、いまだにちゃんと「科学」を信じている)。
こうした教育というか啓発のきっかけになるのがメディアだから、裏返すとメディアは素材を提供するということで、その分、作り込みが減って、「実体を切り取る映像」や「実体を切り取る描写」が中心で、日本のように、情緒的な感想や、タレントや司会者の埋め合わせ的なコメントは入ってこない。大体、ダーウィンの進化論すらいまだに認めない人々がいるわけだから、コメントの付け方は描写から逸脱しないように気をつけないと即座に政治的主張に読み替えられてしまう可能性すらある(で、アメリカではすぐ訴訟に発展する)。あるいは、最初からサブスクリプションベースの、そういう意味ではプライベートなコミュニティ内での情報交換としてしまって、それは放送などのような大括りのルールでは縛らないようにする、などしている。
話は少しずれるけど、いま、NHKの改革問題が話題になっているけど、教育テレビやNスペのような「記録映像」に近いものは、こういう形で提供する手もあるのではないだろうか。本当に受信料を公共のためにというなら、例えば、教育テレビの映像はアーカイブとして利用できるようにすべきだろう(もちろん、ラジオの語学講座は、CDなんかで売るんじゃなくて、ポドキャストで無料で流すべきでしょう)。どうも、チャンネル削減とか経営形態がどうとかいう制度的なことが問題になりすぎているように思う。こうした「公共財」としての「情報」のところにもっと焦点を当てて論理構成をしていけばいいのに。そりゃ、大河ドラマが若者タレント事務所で席巻されて、紅白にはディズニーの着ぐるみが動いたり、BSでメジャーリーグをやっていれば、民業圧迫と言われるはずだよね。
とりわけ、小泉政権以後、極端なまでの保守的な新自由主義がまかり通っているわけだから、例えば教育の機会均等の部分に根ざした方向で考えればいいのに、とは思うけど。僕は地方の出身で、小学生の頃は民放って2つしかチャンネルがなかったから、こうしたことは本当に気になるけど。小泉政権は、愚直なまでに正論で物事を展開し続けてきているのだから、それに対して、きっちり反論すればいいのに。きっと、NHKの人も自分たちの生活がどうやって社会経済的に成立しているのか、わからなくなってきているのだろうなぁ、と感じる(同じことは、新聞の人たちにも感じるけど)。
・・・と随分と脱線してしまったけど、脱線ついでにもう一つ。Iowaが米国全体とは異なる学制を採用している、ということも指摘されているのだけど、こうしたことも、もしかしたら、今話題になっている道州制が導入されたりしたら出てくるのだろうか。そこまでいくなら、東大法学部とかもうフランスのENAみたいに高等官僚養成学校で年間50人しか入れないぐらいにしてしまえばいいのに、と極論もいいたくなってくる。アメリカに住んだ感覚では、日本の高校教育のレベルが大体アメリカの大学(教養部)の教育レベルに近しいから、日本の場合、大学教育の後に専門大学院教育を配備するのは、単純に時間の無駄だし、それほどまでに専門教育の養成期間を延ばすのなら、アメリカのようにスカラシップを多数取りそろえて、機会の平等を目指さないと、本当に金持ちしか勉強できなくなってしまう。教育改革は結果が出るのに20年近くかかるからそういうところがとても気になる。戦前は、地方の名士のところで、ちゃんと書生さんをとって、高等教育に送り出したわけでしょ。そうしたフレームが戻らない限りは、苦しいことになりそう。
映像アーカイブってこういうところからは議論できないでしょうか。
・・・と本当に脱線した。