米電話会社、テレビ配信サービス参入にむけ、連邦議会へのロビイングを強化

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February 15, 2006 20:40 jst
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junichi ikeda

Bells Take TV Ambitions Straight to Congress
【February 15, 2006: Wall Street Journal】

ベライゾンなどベル系電話会社が、有線テレビサービスへの参入にあたり、連邦議会への圧力を本格的に高めている、という報道。

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アメリカのケーブルテレビは、電気、ガス、水道、などと同じように、州ごとの公益委員会が管轄する。そのため、仮に電話会社がケーブルテレビサービスに参入しようとすると、州との折衝が必要になる。しかし、これは、なかなかどうして、大変なこと。各州の利権構造に直接メスを入れることになるからだ。

記事で扱っているのは、こうした州との交渉なしに、トップダウンで、つまり、連邦法の制定レベルで、こうした認可手順を簡素化しようという動き。実際、州ごとに認可時期が遅れるようなら、もはや複数の州に渡り、電話サービスを提供しているベル系電話会社からすれば、投資の算段もつけにくい。ケーブルへの対抗上、電光石火の短期決戦も必要になるだろうから、何にしても、認可手順を標準化することが極めて重要な戦略になってくる。

このあたり、ロビイングを含む法務戦略が、企業戦略に正面から組み込まれているアメリカらしい動きといえる。

さらに、今年は、前回の通信法改正から10年経った節目の年。96年通信法制定時には、情報スーパーハイウェイとしては実はインターネットを前提にしていなかった。そのため、随分と前から、新法の導入が必要だと言われていた。

コロンビア大学に留学していた頃にも、大学で開催されるシンポジウムや広義の中で、さかんに、“Telecommunication Act of 200X”というようなタイトルで、検討がなされていた。

とりわけ、守勢に立たせられているベル系電話会社からすると、96年法は悪法以外の何物でもないことになる。(急いで付け加えると、そうはいっても、96年法の制定によって、電話業界内でのM&Aが進み、資産の効率化を図る素地が用意されたのだけれど)。自由競争の導入により寛容な共和党が大統領府・議会・最高裁を押さえているブッシュ政権の間に、何とか法案の目処をつけたい、というのが彼等の本音だろう。

いずれにしても、幾つかの巨大州を背景にして、全米で四つのベル系事業者が、事実上、有線も携帯も取りそろえ、各々の地の利を活用しながら、ケーブルやインターネット、さらには、Wi-Fiといった近未来のサービスと拮抗していこうとしている。これが事実上、地の利が存在せずに、日本全国をグループ単位で競争してしまっている日本とは状況が異なるところだ。

通信法改正が本格的に起こるのなら、その余波は株式市場を通じて、日本の関係企業にも影響を与えることになる。その意味では、決して対岸の火事にとどまらない動きといえそうだ。