ウインドウ戦略の再最適化?

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January 31, 2006 09:54 jst
author
junichi ikeda

Multimedia Launch of 'Bubble' Gets Mixed Response
【January 30, 2006: Wall Street Journal】

先にもエントリーした話題の、経済紙からの分析。

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長らくハリウッド映画の収益を支えてきたウインドウ戦略の見直しが、多メディア化が進む中、本格化してきている。

従来は、大まかに言うと次のような流れだった。

映画館興行→ペイテレビ(PPV、有料チャンネル)→パッケージ(ビデオ、DVD)→無料広告放送

この前半の鑑賞者・視聴者から直接対価を取る部分を、同時にやってしまおうという動き。

つまり、以前は、時間軸によって同一商品のバージョニングが図られていたのだけど、複製技術の一般化によって、その時間差差異化要因が減じてしまった。悪く言えば、海賊版の全世界的発生だし、言い意味では、いわゆる口コミ効果で、様々な評価が短期間のうちに飛び交い、言説として消費されてしまう状況が生まれているから、ということになる。

(路上海賊版DVDの販売が常態化しているNYの経験を踏まえると、ハリウッド的には、もっと切実に、海賊版対策なのだと思うけど。)

いずれにしても、時間価値ではなく、同一商品の接触点による価値の追求、という、あえていえば空間価値へと転じることを試みているわけだ。

後者のよくある例は、コーラの値段。普通に買うと100円ちょっとのものが、遊園地や遊興施設の中だと割高に売られる。あるいは、飲食店だとちょっと高めだったりするのに近い(で、利ざやが高いのは、もちろん、こうした割高のところなのだが)。

面白いのは、日本と違って、アメリカの場合、ブロードバンド環境はまだ大衆化していない、という感覚なのだけど、にもかかわらず(いや、だからこそかもしれないが)、ハリウッドがさっさと先手を打って、予見される事態への対応を行っていること。この辺りは、経営者周辺の意思決定のメカニズムの米日の違いがよく表れているところだと思う。